認知機能について

米国の認知症の診断基準で主要な6つの認知機能について、以下のような機能が含まれ、障害により出現する症状を列記します。

①複雑性注意(注意の分配・持続・選択、処理速度)
軽度・・・通常の作業が以前より長く時間がかかったり、ミスが増えたり、仕事などで再確認が増える。他の刺激(ラジオ、テレビ、他者の会話、運転)と競合すると、思考への集中が阻害される。
重度・・・複数の刺激のある環境では注意集中が出来ない、気が散る。今言われたことを報告したり、新しい情報を保持するのが難しい。暗算ができない。考える時間が長くかかり、指示などの単純化が必要となる。

②実行機能(計画性や意思決定、作業記憶、エラーの訂正、認知的柔軟性)
軽度・・・多くの手順や段階を必要とする計画を完遂するまでに努力を要するようになる。複数の処理を並行して行う課題や仕事が難しくなったりする。整理、計画、意思決定に多くのエネルギーを使うため、疲れを感じやすくなったり、会話の変化についていきにくい。
重度・・・日常生活上の活動を計画したり意思決定を行うのに他者の力が必要となる。

③学習と記憶(即時記憶、近時記憶、長期記憶、潜在学習)
軽度・・・最近の出来事を思い出すのに苦労し、思い出そうとする度に手がかりなどを必要とする。請求書の支払いが済んだかどうか思い出せない。
重度・・・同じ会話の中で同じ内容の話を繰り返す。買い物の品目や1日の予定を思い出すことが出来ない。作業を完遂するために、頻繁に手がかかりが必要となる。

④言語(表出性言語(呼称、換語、流暢性、文法)、受容性言語)
軽度・・・物の正しい名前を思い出せない。短時間で野菜や動物の名前などを多く挙げられなくなる。顔見知りの人の名前を思い出せず、名前を呼ぶことを避ける。
重度・・・固有名詞が使えず「あれ」などの代名詞が増える。症状が進むと、親しい友人や家族の名前も思い出せない。言語を使った指示に従った動作や活動が難しくなる。

⑤知覚-運動(視知覚、視覚構成、知覚-運動、実行、認知など)
軽度・・・新しい場所に移動するために、より多くの手がかりやヒントが必要になる。集中しないと道に迷ってしまう。駐車が以前ほど正確に出来なくなる。物の整理や大工、組み立てや編み物のような空間作業に、より大きな努力が必要になる。絵を書いたり、模写、身振りなどの模倣、命じたことをパントマイムで表す(金槌はどのように使うかやって見せてもらう)、顔や色の認識が不明瞭になる。
重度・・・以前からやり慣れていた道具の仕様や自動車の運転、慣れた環境での移動が困難になる。影や明るさの低下が起こる環境、例えば夕暮れ時に混乱しやすくなる。

⑥社会的認知(情動認知、心の理論)
軽度・・・行動や態度などの微妙な変化を手がかりにして相手の気持ちを捉えたり、顔の表情を読む力が低下する。共感の現象。活き活きとした感情が一時的に薄まる。落ち着きがなくなり、人格が変化したように周囲から感じられる。
重度・・・許容される社会的範囲から明らかに逸脱した言動や振る舞い、社会的な基準に無神経になる、周囲の状況に対して無関心で1つの話題に過度に集中する、家族や友人に配慮せず行動する、安全を考えずに意思決定する、状況にそぐわない不適切な服装、これらの変化に対して認識がない。

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