物忘れ/認知症について

この記事を読まれている方は、最近「以前より物忘れが多くなった気がする」「同じ話を何度も言ったり聞いてしまう」「約束を忘れたり、身だしなみにも気を遣わなくなってきている」などの言動にあれ?と思う方、以前から診断は受けているものの最近イライラが強かったり、夜に眠れなくなっていて家族の方が心配という方ではないでしょうか?

目次

認知症とは

認知症とは、社会生活を送る上で普段必要とされている知的機能のいくつかの機能が後天的に低下し、日常生活に支障をきたした状態のことを言います。認知症の中には、サブタイプと呼ばれるいくつかの疾患(軽度認知障害、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など)があります。

 米国の新しい診断基準では、知的機能を6つに分類(複雑性注意、実行機能、記憶と学習、言語、知覚-運動、社会的認知)して、そのうちの1つ以上の認知機能が以前に比べ低下している事を診断の条件としています。一見、認知症の様な症状や言動が出現していても、年齢相応の物忘れや背景に異なる精神疾患(うつ病や妄想性障害など)が存在していたり、回復可能な認知症などであったりすることもあり、診断については専門的な見地が必要になることもあります。

👉認知機能について

認知症と間違えられやすい状態とは

認知症のサブタイプの診断の前に、認知症と間違えられやすい疾患や状態もあり、鑑別が必要になります。
【正常な加齢】年を重ねると人の身体機能や精神機能は衰え、認知機能も加齢の影響を受けます。加齢による記憶機能の変化の特徴は、新しく学習できないことではなく、すでに学習した情報を想起しにくくなることです。特に物の名前(固有名詞)などが出にくくなるのはよくあることです。この場合、思い出す(記憶の想起)ためのヒントや手がかりがあれば、「あっそうそう○○ね!」と記憶の棚から覚えたことを引き出すことが可能です。よく体験したことを覚えているかどうかで、病的な物忘れかどうかを確認することがありますが、加齢性の物忘れは、新たに体験したことをすぐに思い出せなくても、ヒントを出せば思い出すことができるわけです。

【せん妄】何らかの器質的要因(身体的要因など)により、急に起こる一過性の精神機能の変化、一時的な状態のことをいいます。例えば、高齢者の方で「入院して手術後に突然認知症の様になった」「興奮して点滴を引き抜こうとして精神運動が激しくなりベットサイドでついていけないといけなくなった」「ぼんやりして一日中寝ている様な状態が続いている」なども、せん妄状態を合併している可能性があるものです。せん妄では、軽い意識の変容を伴っており発症が急で変動的な経過を辿り、器質的な要因を見つけ取り除いてあげると以前の状態に戻ります。中には器質的要因が見つからなかったり、認知症に合併する事もあり、見極めが大事です。薬の影響でせん妄を起こすこともあり、またせん妄の要因として最も見落とされやすいとも言われています。

【健忘/失語など】アルコール離脱症候群の一部や脳卒中、頭部外傷などにより脳の一部にダメージが残り、認知機能の一部分だけ機能が低下した状態。認知症とは記憶を中心にその他の認知機能の低下を認めるもので、健忘症や失語症と認知症は違うものです。

【うつ病】周囲への無関心、社会的ひきこもり、身だしなみへの注意力の低下、活動への興味喪失など、うつ病でも認知症でも認められる症状です。気分と思考の微妙な特徴を捉えた精神機能全体の注意深い診察が必要となります。鑑別が難しいケースもあり、認知症の前段階でうつ症状が出現したり、認知症と併存する事もあります。

認知症の原因疾患について

認知症の中には複数の疾患が含まれています。その中でも3大認知症と呼ばれる疾患があり、①アルツハイマー型認知症(AD)、②レビー小体型認知症(DLB)、③脳血管性認知症(VaD)がそれにあたります。我が国の認知症全体の中では、アルツハイマー型認知症が約50%、レビー小体型認知症が約20%、脳血管性認知症10%と割合の多くを占めます。他に前頭側頭葉型認知症(5~10%)などがあります。認知機能の一部が低下するも他の認知機能は保たれ、結果として日常生活に支障が生じていない軽度認知症障害(MCI)という状態も最近では注目されています。

👉アルツハイマー型認知症について
👉レビー小体型認知症について
👉血管性認知症について

認知症の診断と治療

診断は、まずは認知症に類似した状態か、本当に認知症であるかを見極めることから始まります。上で書いたように、認知症と間違えられやすい状態があります。特に初老期や老年期に多発するうつ病との鑑別は難しく、専門的な診察が必要になるケースや半年以上の経過を見ないと判断がつかない場合もあります。それらの鑑別を行い、認知症であると診断された場合、次に認知症の原因疾患を見つけていきます。回復可能な認知症と呼ばれる疾患(慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症、脳炎・髄膜炎など)が隠れていたりして、それらを見つけて個別の治療やケアを行います。次に予防が重要な血管性認知症や、頻度として多いアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症についての診断を行います。原因疾患の診断がつけば個別に予防及び進行抑制となる治療やケアを開始していきます。経過中に周辺症状が出現すれば、その都度ケアの方法を話し合っあたり、場合によっては精神科のお薬を使っていく場合もあります。病気別の特徴や対応の方法を介護を行う方々に知ってもらうことも大切ですし、介護を行う方の精神衛生にも注意を払うことが重要です。病気別の特徴や重症度、合併症などをを評価し、家族の介護力や地域の特性などを考え合わせて、リハビリとケアプランの検討を重ねながらご本人や本人を支える家族及び支援者の支援を行っていきます。

介護サポートについて

認知症の家族を介護していくうえで、介護者の負担が強まり施設や病院での治療やケアが必要となることがあります。家族全体の介護力の問題もありますが、中核症状である認知障害での介護サポート以上に、周辺症状である精神症状や問題行動で悩むことが多いと言われています。特に在宅介護を難しくする要因として、認知症の方の①睡眠障害(不眠)と②攻撃性が挙げられ、それらが頻回になると家族では対処するのが困難となります。下記に①と②の2点について対策を記載したいと思います。あくまで一般的な対策であり、介護については個別的な視点も必要で、また実際にこれらを実行していくことは簡単な事ではないと思います。一つの参考として下さい。

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