成人期ADHD・成人期ASDについて

発達障害の中で、特に成人期のADHD(注意欠如/多動性障害)と成人期のASD(自閉症スペクトラム)の特徴について記載します。

目次

成人期ADHDについて

ADHDは12歳以前までに不注意と多動・衝動を中心的な特徴を認め、成長に伴い軽快する症状もあるのですが、一部は成人期まで持ち越して持続します。特に不注意や衝動性は大人になっても残る方がいます。不注意優勢のADDタイプの方は子供の頃にあまり気付かれなかったり、ADHDの方でも学生時代は運動やスポーツで活発に活動して上手く環境に適応出来ていたりする場合もあるようです。しかしよく見ると生活の中での不注意や物事を段取りよく計画的に進めるのが苦手であったり、おっちょこちょいな部分が小さい頃からある事が多いのです。

成人期ADHDとして特徴に気づくパターン

大人になり会社に入社したら、学生時代と比べ与えられた課題に対する評価が厳しくなります。期限内に課題を完遂させる事を厳しく求められたり、計画的に業務を進めたり、計画書を間違いなく記載したり、同時に複数のタスクを管理しながら仕事をしていくことに直面したり、多くの人と会って多様な情報や刺激を処理する必要が生じたりします。それは誰にでもありうる状況ですが、他の誰もがそれなりにこなしていく中でADHDの特性でつまづき、悪循環に陥ってしまう場合が多いようです。敏腕営業マンが昇進して苦手な管理業務を行う中でミスが目立ち完全に自信をなくしてしまったり、結婚し家庭内で新たな役割を担う中で家事をこなせずパートナーから指摘されたり、環境変化に伴い顕在化する事があります。多くは自分を責めて自信を失い不眠や抑うつ症状が出現したり、不安症状が持続し会社に行けなくなるなど適応が難しくなり受診する事が多いです。

成人期ADHDの特徴

不注意:
課題処理に集中持続が出来ない、集中して話が聞けない、注意がそれやすい
注意しても忘れ物落とし物が多い、ケアレスミスが多い
片付けや身辺の整理が苦手、
段取りが悪く時間通りに進められない、時間の判断を誤る、遅刻が多い
課題を順序立てて遂行するのが苦手、計画を立てられない、
特に仕事面で苦労を感じやすい

多動衝動性:
お喋りが止まらない、一方的に自分のことばかり喋る、
順番を待てない、人の発言に割り込む、不用意な発言をする、
深く考えず思いつきで判断、行動しすぎる、金銭管理ができない、度重なる転職
沢山の企画を始めるが、ほとんど最後までやり遂げられない
落ち着きがなく、身体の一部を動かす
思考や会話、行動などがとっ散らかり周囲の領域に割り込んでしまう

その他に、対人トラブルが増え、非難されることが多くなる
ギャンブルやゲームなど刺激を求めたり、それに嵌り大事な課題を先延ばしにする

短所としてはよくあげられますが、同じくらい長所があります。
人により特性の数や程度は異なります。

成人期ADHDの診断と治療

支援の開始を前提として診断を行っていきますが、診断としては子どもと同様にこれまでの発達歴を調べながら、複数筋からの情報を集め、問診と診察を重ね、場合によっては心理検査なども行い診断をすすめていきます。ASDやその他の発達障害を合併していたり、その他の精神疾患を併存していたりするため診断が難しいケースもあり(参照☞ADHDの診断について)、丁寧な問診と評価が大切になります。
治療については2次障害の治療と緩和、特性理解、薬物療法、環境調整などあり、大人の発達障害でも書いたように、身近な支援者へのアプローチも重要になります。

成人期ASDについて

軽度の自閉症スペクトラム特性がありながらも、児童期・思春期において大きな不適応をおこさずに青年期をむかえる方がいます。アスペルガー障害アスペルガー障害、高機能広汎性発達障害、特定不能の広汎性発達障害、発達凸凹、グレーゾーン、広範な自閉症発現型(BAP:broad autisum phenotype;広汎性発達障害と同様の特徴を持つが軽微で社会生活上で大きな問題とならず診断にはいたらないタイプ)と呼ばれたりします。
前3者は2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSMにおいて診断名はASDに統合されました。近年になって、後3者をASDと正常との間で連続的に含めてとらえる考え方が出てきてます。
生まれながらの特性が薄かったり、マッチした環境ケアの中で思春期をくぐりぬけ大人になっていくのですが、薄っすらと”自分はどこか人とは違う”という違和感や”何となく生きていくしんどさ”を抱えていたりする方も中にはいます。

成人期ASDとして特徴に気づくパターン

就職面接や職場のグループワーク、対人調整や折衝を必要とする業務などで思った以上に結果を残せなかっかったり、主に職場で対人関係の問題や業務処理でトラブルとなる場合が多いです。なかには結婚してパートナーとの関係でパートナーが当人との関係に悩み、そこで気づかれるケースもあります。世間では俗にカサンドラ症候群と呼ばれていたりもします。

成人期ASDの特徴

社会性の特徴:他者との自然な距離感、自然な振る舞い、仲間関係や自然で親密な関係を主体的につくることが苦手、空気を読む事が苦手、雑談が苦手

コミュニケーションの特徴:相手の話すメッセージを正しく理解し受け取り、自分の気持ちや考えを適切に相手に伝えるなどの一連のやりとりが苦手、言葉の使用がかたい、反語や婉曲的な表現が分かりづらい、言葉の意味を取り違える、冗談が通じにくい

こだわりの特徴:環境変化が苦手なため自分の安心できるルールや環境など、同一の環境をを強く求める特徴、急な予定変更などにストレスを強く感じる・固まる・パニックになる、想像力が弱い状態ともいえ、これまでの振り返りや先々の見通しをつけることが苦手であっあたりする
その他、
相手の気持ちがわからない(仲の良い友人や同僚が作れない、少ない)
女性の場合、周りの女子達に比べ受け答えが人より遅かったり、興味関心がないなどで、ガールズトークのテンポやペースについていけない
考え方が柔軟でない(暗黙の了解がわからない、融通がきかない)
独特の思考・行動様式(細部への拘り、局所的な物事の捉え方、狭く深い興味対象)
注意持続が困難(限られた特定のものにだけ注意が向かう)
感覚が過敏・鈍感 (音・光・臭い・触覚や痛み等の感覚が敏感/鈍感、PCモニターがまぶしい、オフィスの周囲の作業音が耳につく、)
衝動・感情の調整が苦手(衝動を抑えるのが苦手、イライラが爆発しやすい)
自律神経が不安定になる (ストレスで便秘や下痢、頭痛など)
手先が不器用・運動調整が苦手、姿勢が悪い

こういった特性があり、ものすごく疲れやすい毎日を送っている方もいます。
短所としてはよくあげられますが、同じくらい長所があります。
また人により特性の数や程度は異なります。

👉自閉症スペクトラムの特徴について(動画あり)

成人期ASDの診断と治療

支援の開始を前提として診断を行っていきますが、診断としては子どもと同様にこれまでの発達歴を調べながら、複数筋からの情報を集め、問診と診察を重ね、場合によっては心理検査なども行い診断をすすめていきます。他の身体・精神疾患との鑑別や2次障害の併存などの評価を行っていきます。女性の場合は男性ASDと違い慢性疲労や原因不明の身体症状、その他の特徴を伴っていたりします。成人期ADHDと同様、過去の発達歴を辿る事が困難で診断が困難であったり、特性が軽度でBAPや発達凸凹としか言えない方も多くいます。

中には環境への不適応から強い情動的な混乱を来していたり、一過性の精神病症状、気分障害や不安障害、強迫症状、解離症状、自傷行為など多彩な精神症状を合併していることもあります。
治療については症状の強度により薬物治療や環境を調整を図っていきます。ゆっくりと特性についての理解を進め、生活適応をしやすくなる方法を一緒に考えていきます。治療にあたって大人の発達障害や成人期ADHDでもふれたように、安心して過ごせる環境や関係がとても大事になります。本人を支える身近な支援者へのアプローチやケアも重要になります。

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