一休みして、また歩き出す
回復への旅路をお供します
発達障害のうつ
目次
うつを併存した発達障害の現在
近年、広汎性発達障害やADHDなど発達障害特性を持った方が様々な病像を呈し、多様な経路で病院受診するケースが増えています。これまでの精神科救急の現場では、自己診断をされて受診される方や、精神症状を主訴として外来を受診される方、夜間救急で強い精神症状を呈して入院される方などに多く出会って来ました。特に思春期以降は精神症状が前面出てきて、診療する経過の中でベースの発達障害が分かる方が大半です。発達障害の特性がありながらも診断には至らず、学校年代は何とか適応をして過ごせていたのだけれども、成長して複雑な対人関係や社会的状況への対処に直面した結果混乱し、不適応の状態が持続すると2次的に精神症状を発症してしまう方ばかりでした。
意外かもしれませんが、国内の調査では発達障害と診断されるお子さんより、診断閾下レベルのお子さんの方が、2倍近く治療が必要な精神症状を持つという報告もあります。分かりやすく言うと、障害特性が薄いほうが、より精神医学的なリスクが高く精神症状が出現して治療の必要が生じやすいという事です。
発達障害の二次障害
細かく見ると、年齢が上がるにつれ、かつアスペルガー障害(AS特性の強い方にうつ病が併存しやすい事が分かってきています。国内外の報告ではASの10%~25%にうつ病が併存するとも言われています。またADHDの方も、うつ病や躁うつ病の併存に注意が必要です。ADHDの方は、その特性から普段より叱責を受けやすく、自尊感情が傷つき発病リスクの高い状況におかれています。加えて思春期以降は心と身体の成長から、葛藤や衝動性が高まり逸脱行動を起こしてしまったり、あるいは周囲から孤立して不安や抑うつ気分が強まり、登校や会社に出勤できなくなってしまうケースも多いようです。
併存率は高いと言われていますが、実際に発達障害と気分障害(うつ病や躁うつ病)の併存を診断する事は難しいと言われています。ASの方などは自身の困りごとや心の中の体験を表現する事が苦手なため、定型発達の方に対する診察方法と同じやり方で症状を把握する事は困難なためです。この場合は間接的な情報を得たり周縁を観察したり、ツールを使用する事が有効であったりします。また行動の質的変化を見ていったり、強迫症状や生活スキルの変化などを捉えて判断したりします。
ADHDでは不安、抑うつ、イライラ、無気力、不登校、吐き気などの身体症状、易怒的、逸脱行動、落ち着きがない、些細な事が気になる、自傷行為などの症状として表現されたりします。症状が多彩でADHDの症状とオーバーラップしているものも多く、うつの症状と混同されやすく見極めが難しいとされています。抑うつ状態が続くからと言って、早急に薬物治療だけで対処してみても上手く行かない事もあり、抑うつの理由を探索していく事が治療的に大事だったりもします。
併存するうつの治療
併存するうつの治療については、思春期に近くなれば、大人と同様のガイドラインを参照にして、薬物療法や認知行動療法、対人関係療法を組み合わせてすすめていきます。またご家族の方がうつや不安障害などの精神症状を患っている場合が多いと知られており、本人への治療に加えて、家族への治療を行っていく事も重要と言われています。
ADHDの児童や青年で行動化が続く場合は、家族の中で強い葛藤状況が持続したりするため、家族精神療法も行います。加えて本人への関わり方の修正に、親ガイダンス、ペアレント・トレーニング、学校や会社への連携など、本人以外への働きかけも同時に行ったりもします。上記以外にも、ピアグループなどの支援団体への参加などが回復と成長の支援になると考えられています。
発達障害をお持ちで精神症状で悩まれている方は、相談しやすいかかりつけ医の先生を見つけられて、ライフステージに合わせた息の長い相談をされる事をおすすめします。
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