自閉症スペクトラムの特性について 

特性について 詳しく
社会性の障害について
ASDの方には必ずある特性です。しかし障害されている特性の程度は、社会的な相互性が変わっていると呼ばれるものから、他者に対して全く無関心で反応を欠くものまで様々です。この特性は見知らぬ人や同年代の他者に関わる時に表れやすく、元々慣れ親しんだ家族やよく世話をしてくれる人には愛着的な反応を持つ事が出来たりします。社会性の障害の表れ方としては、年齢(乳幼児期~成人まで)や精神発達(成長とともにどのくらい知能や環境に適応する力が発達していっているか)によって変化していきます。具体的には、目を合わせるアイコンタクトが乏しい、応答はあるものの自ら主体的に社会的な働きかけをしようとしない(例えば他者から注意をひくような行動)、楽しい経験を他者と分かち合うことに興味がなさそうに見るなどがあります。
表情や口調、体の動きによって他者の感情を読み取ることと、自分の感情やストレスを感じたり表現することの両方が苦手でもあります。相手が今何を感じているのか?どういう精神状態にあるのかや関係性を理解することも困難な方が多いです。そのため成長し周囲に適応していく過程で、「相手から○○と聞かれたら、□□と返答すると同時に笑えばよい」と対人場面での対応について一つ一つ自前のデータベースを作っている方もいたりします。
また、ASDのお子さんは周囲の行動をまね(模倣)することが苦手であり、このことが対人関係における協調性やコミュニケーション、柔軟で相互性のある象徴遊び、新たな環境や変化への行動を学習することを遅らせているとも考えられています。

コミュニケーションの障害について
話し言葉の発達において問題(オウム返し的な応答や助詞や接続詞の使用の誤り)があると言われますが、それ以外にも話し言葉を理解することに困難さを持ち、言葉の意味の理解に柔軟性を欠いたり、文字通りの解釈をしてしまう、冗談が通じなかったり、文中の枝葉にあたる1、2語にのみ反応してしまう事があります。状況に合わせた口調や声音量の調整が難しく、言葉を使わない非言語的コミュニケーションを理解したり、使うことが困難であったりします。行動自体がコミュニケーションになることを理解していないことで、相手の表情や身振りの意味が理解できず、また行動を起こしてコミュニケーションを図ろうとしない(指で物を指す、興味のあるものを他者に見せる、視線で相手の注意をひきつけようとすることなど)ことが知られています。障害の程度が薄く、言語能力が高くおしゃべりでとても積極的な方もいますが、言葉の実践的な使用の部分で困難さを抱え、会話の前後関係を捉えてトークにちょうどいい感じで参加することが苦手であったり、複数人の会話になると何を言っているか分からなくなったり、ユーモアや皮肉なんかを理解できにくい方もいます。

想像力の障害について
幼児期、特に就学前の子どもに特徴的な、人形遊びやごっこ遊びに複数人に加わって参加刷ることが難しい。テレビや教育材のキャラクターなどの真似をすることがあっても、周囲との相互性を欠くただの「なりきり」であったりすることが多い。ごっこ遊びで展開するストーリがいつも同じであったり、そこで発生する対話やセリフが決められた通りでないといけなかったりする。繰り返しの多い単純な方法、パターンが決まっているなかでしか参加出来なかったり、自ら主体的に遊び相手を探したりすることも少ないとされています。相手の感じている感情(喜びや悲しみや怒り)を共有したり分かち合う事が難しく、このことは過去から現在の経験を将来の計画に活かすことの難しさにもつながっているようです。

限定的な興味・関心、行動の特性について
幼児期の頃から、新しいものへの興味や好奇心、独創性によって特徴づけられるオモチャ遊びが乏しいと言われています。年齢とともに遊びでの表れ方は変わっていきますが、遊びの多くの時間を限定的で反復的、儀式的な手順にしたがった操作、物を扱う活動に没頭することが多いとされています。例えば、物を口で吸う、ブロックを振る、ミニカーのタイヤの回転を見つめる、ミニカーを並べる、CMやビデをの一場面だけを繰り返し見る、アニメや特定のジャンルのアイドルに夢中になる・・など。言葉の力のある方では、好きな話題や特定のテーマに関しては知識も豊富で流暢に語ったりされます。スイッチが入った様に多弁に語り、周囲を驚かせることもあるようです。大人になってからも、趣味や活動、話題などの内容も熱心さも限定され特異的な場合が多いようです。また単純な反復的動作を好み、小さい頃は物を回したり、回っているものを見るのが好き(換気扇や扇風機など)だったりもします。日常生活では手の込んだルーチンや決まりごとがあり、物をきちっと並べる事や同じ手順にこだわる(登下校の道順を変えることを嫌がったりする子もいます)ことが多く、それらのパターンが崩れたり変化したりすると、非常にうろたえたりします。

発症の時期について
ASDは原因はまだ不明で、先天的な脳の機能の偏りによるものと推測されています。遺伝による、母の子育てにより発症するものではありません。通常は3歳までに発症すると考えられているものの、後になって気づかれることも少なくはありません。一般では生後1歳までは、受動的な性質や異常な気難しさ(怒りっぽさ、あまり眠らない、ほとんど食事をとらない)、抱っこしづらさ、視線が合いづらい、いないいないばーで笑わない、母子の手遊びの模倣に興味を示さないなどの方向があります。しかし多くの子どもは生後1年間はあまり特異的な症状を示さず、1歳以降に言葉の発達の遅れで最初に気づかれる場合が多いです。また3~4歳頃になり、主体的な社会的興味や関わりが乏しく、上で書いたようなこだわりが出現し、こだわりを制限された時の激しい情動的な反応などの付加的症状で気づかれたりします。

付加的症状について
常同的行動・・・感覚刺激を生み出すような行動を時に認めます。具体的には、指や手の繰り返す運動、歯ぎしり、手をパタパタっせる、くるくる回る、体を揺する、興奮したり不安な時にのちょっと変わった運動など。

感覚の特殊さ・・・すべての感覚刺激(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、痛覚)などに対する反応が時に、過剰もしくは過小であったりします。聴覚過敏で子どもの笑い声や静かな空調の音がうるさいと感じたり、白色灯の光が眩しくて字が読みづらい、注射に対して痛みを感じにくいか恐怖の対象となるくらい痛がる、臭いに敏感で特定の洗剤しか使わせてくれない、過敏な味覚で調味料が限定される、服などの肌触りにこだわり同じ素材の服しか着ない・・・など。

緊張や情動調整不全・・・状況変化やこだわりへの制限、ちょっとしたことでも非常に緊張や不安を強く感じてしまい、それを状況に合わせてコントロールすることが難しい。かんしゃくを起こしたり、パニックになったり、”えっ!”と思考停止やかたまってしまうことなどもあります。

協調運動の低下・・・大きな運動である体の動かし方(歩く、走る、スキップ、水泳、ボールをコントロールするなど)や、細かな運動である手先の協調運動が苦手な方もいます。お箸やハサミが苦手、鉛筆の筆圧コントールや直線を真っ直ぐに引きにくい、枠からはみ出す、ボタンやジッパー、靴のちょうちょ結びが苦手であるなどもあり生活動作に影響があることもあります。

高次感覚のアンバランス・・・知的障害との合併や、特異的な認知能力の独特で凸凹とした発達をしめします。認知発達のアンバランスから幼児期には年齢相応の図形を描けなかったりもします。言葉と社会性の発達が遅れることが多く、一方で視空間認知や技能、物事の記憶など発達は遅れが少ないもしくは逆に発達が早く、そこを強みとして生活に適応している方もいます。物事を組織化する技術や一つの考えや行動を状況に合わせて変えたり、複雑な運動を計画して実行する力が障害されている場合もあります。

自律神経系の不安定さ・・・自律神経機能が過敏であったり、失調傾向を示すこともあります。元々もしくはストレス環境に反応してひどい便秘や下痢、気圧や温度に敏感で体調を崩しやすい、疲れやすい、頭痛が起こる場合もいます。自律神経失調症起立性調節障害過敏性腸症候群などを合併することもあります。

神経学的異常・・・筋緊張の過剰な亢進や得意な運動様式、成人期までにてんかんを合併するケースもあります。

自閉スペクトラム症について

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